スタッフレポート

烏丸三条のバー Loki ACADEMICA。
お酒を片手に「呑みながら講義」は始まる。

今日のせんせいは、化石を研究する岩出昌さん。京都大学の学生だ。彼は毎年夏が来ると、ヒグマの棲む北海道の山奥に探検に行く。化石を現場で見るためだ。化石の研究者というと、倉庫で化石の棚に囲まれて研究する印象もあるが、化石研究はそれだけではない。「自分の手で化石を掘る」こともする。現場に行くと、その生物のかつての生き様が色々と見えてくるのだそうだ。

彼の調査のエピソードはとても面白い。普段はなかなか入ることのできない国有林に分け入って、滝を登ったりもする。危険な動植物にも注意が必要らしい。山奥では、ヒグマ除けとして鈴を鳴らし、ハーモニカを携える。

調査地の羽幌には、研究室伝統の定宿があり、音楽を趣味にしている岩出さんは、宿のために曲を書いてプレゼントしたとか。調査は大変そうでもあるが、楽しそうでもある。

さて、調査地で彼が探すのは、化石と言っても恐竜やアンモナイトではない。イノセラムスという二枚貝だ。化石としては目立たないかもしれないが、かつては大繁栄した生物である。

「「どのような石の中に」「どのような生物とともに」「どのような状態や状況で」その化石が出てくるのか、など着眼点は色々とある。その場で見えるモノに対し、生物や岩石などの幅広い知識と想像力を総動員し発掘を進めるのだろう。」経験を積んで初めて気づくこともあるそうだ。

絶滅してしまっただけに、現生との比較ができないのが難しい点だが、この貝はどのような暮らしをしていたのか、他の動物や木にくっついていたのか、群れていたのか、孤高に暮らしていたのか、などを数々の化石を元に推測する。

同じ化石でも「ただの沢山の貝がらで終わらせずに、その貝たちが生きていた姿を推理できるのが化石研究者なのだろう。さらに豊かなストーリーを見出すべく、調査はこれからも続く。

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講義の後も、ゆったりとお喋りの時間が続いていた。こんなに豊かな時間、長らく忘れていたかもしれない。せんせいの面白い話に、感性豊かなお客さんたち。いつまでもその場で話を聞いていたかった。

(山田 諒)

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