スタッフレポート

青いバラは、時々悩むことがあった

自分は、少し周りと違うのではないだろうか
周りの、赤や、白のバラ達とは、何かが違う・・・

ある時、青いバラは、いつも自分に水をくれている人間に、聞いてみることにした

「自分が感じる違和感の理由について、何か知ってる?」

その人間は、青いバラを開発した科学者だった

青いバラは初めて知った

自分が、6千種〜7千種あるバラのうち、たった一つの種類であること

他のバラ達には無い、デルフィニジンという青の色素成分を、自分がほぼ完全な状態で持っていること
それは科学者達がパンジーから青色遺伝子を採取し、それを、バクテリアを介して自分の中に入れたからであるということ
自分の花粉が、他の生物に影響しないことを科学者達が何度も確かめたこと
その証明がなされたから、自分の仲間は増え、色々な場所に住む人間の手に渡っていくのだということ

それからしばらくの間、くる日もくる日も、青いバラは自分が聞いた話を考え続けた
深く、考えこんだ日もあった

けれど不思議と、以前感じていたような、そこはかとない不安はなくなっていた

―自分は、“青いバラ”なのだ―

またしばらくして、再び青いバラは科学者に聞いてみた

「ねぇ、これから少しずつ、自分の・・“青いバラ”のことについて、もっと教えてくれる?」

科学者は、穏やかな、優しい眼をして
「もちろんだよ」と微笑んだ

青いバラも、ふっと笑った

(阿部美香) inserted by FC2 system